抄録
【目的】 運動耐容能は呼吸機能と心機能、骨格筋機能に影響を受け、呼吸器疾患患者はこれら機能が低下し、運動耐容能を低下させる。特に骨格筋の機能低下が著しく、近赤外線分光法(NIRS)により、運動中の筋の酸素消費が低下するとされているが、最高酸素摂取量と局所筋酸素動態の関連は弱いとされている。血液組織脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy Hb)は酸素と結合していないヘモグロビンであり、安静時から運動時への変化量ΔDeoxy Hbは酸素の消費と供給のバランスの指標となる。そこで今回、ΔDeoxy Hbは有酸素能力を表す嫌気性代謝閾値(AT)と関連があるのではないかと考え、労作時低酸素血症が著しい間質性肺炎(IP)患者においてΔDeoxy HbとAT時、最大運動時の各指標との関連を検討した。
【方法】 対象はIP患者18例。内訳は年齢66.1歳、%VC94.3%、%DLco67.0%であった。対象に心肺運動負荷試験(CPX)を測定した。CPXは自転車エルゴメータを用いて10W/分のramp負荷を症候限界性に行い、呼気ガス分析装置を用いてAT時とpeak時のVO2と負荷量(Watt)、を算出した。CPX測定時にNIRSを用いて大腿四頭筋外側広筋で局所筋酸素動態を測定し、Deoxy Hbを測定した。AT時とpeak時のDeoxy Hbから安静時のDeoxy Hbを減算した値、ΔDeoxy Hb(AT-rest)とΔDeoxy Hb(peak-rest)を算出した。ΔDeoxy Hb(AT-rest)とAT時のCPXのデータ、ΔDeoxy Hb(peak-rest)とpeak時のCPXのデータの相関関係を検討した。
【結果】 Deoxy Hbは安静時は6.9±1.5 AU, AT時は6.7±1.9AU, peak時は7.3±2.3AUであり、peak時がAT時より有意に高値であった(p<0.05)。ΔDeoxy Hb(AT-rest)はAT時のVO2, Wattと相関関係を認めた(r=0.56, r=0.56, p<0.05)。ΔDeoxy Hb(peak-rest)はpeak時のVO2, Wattと相関関係の傾向を認めた(r=0.44 p=0.07, r=0.44 p=0.07)。
【考察】 IP患者の骨格筋の酸素消費はpeak時に最も高くなる。しかし、運動中のΔDeoxy Hbはpeak時の各指標と比較し、AT時の各指標との間に相関関係を認めた。中等度の運動強度であるAT時は、主に好気性代謝によるエネルギーを使用するため、ΔDeoxy Hbと関連を認めたと考える。一方peak時は、骨格筋の好気性代謝以外のエネルギー産生の影響も受けるため、ΔDeoxy HbとpeakVO2などの相関関係はAT時と比較して弱かったと考える。
【結語】 IP患者の骨格筋の酸素消費を表すDeoxy Hbは有酸素能力と関連があった。