時間学研究
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福岡県久留米市合川地区における土地利用の変遷と水害リスクの評価
古場 杏奈山本 晴彦松岡 光美兼光 直樹
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2022 年 13 巻 p. 73-89

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抄録
本研究では、2018年7月豪雨において浸水被害に見舞われた福岡県久留米市の合川地区を対象として、土地利用の変遷によってもたらされる水害リスクの変化について、旧版地図、住宅地図、都市計画図、治水地形分類図および洪水浸水想定区域等を用いて解析を行った。2018年7月豪雨の影響により筑後川支川の下弓削川・江川流域では内水氾濫が発生したが、市街化調整区域の江川流域はほとんど土地の開発が進んでないことで住宅の浸水被害が発生しなかった。一方、市街化区域に指定された下弓削川流域は低平地の都市化が進行して浸水被害が拡大していた。特に,下弓削川流域の合川地区は九州自動車道の開通および久留米インターチェンジの開業により、運輸業が創業して物流の拠点となっており、また合川バイパスの開通によりバイパス沿いには商工業施設等のロードサイド店舗が開業して、周辺には住宅が建設されて開発が進められていた。都市化が進んだ一方、この地域は浸水に対して脆弱な氾濫平野に位置しており、低平地の水田地帯における農地転用により開発が進行したことにより、浸水被害が拡大する結果となった。1970~2020年の半世紀の間において建物面積は増加を続け、建物面積の構成比率は洪水浸水想定区域の浸水深が深い範囲での比率が高くなっており、増加した建物は浸水リスクの高い土地に建設が進められていたことが明らかとなった。
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© 2022 日本時間学会
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