2014 年 14 巻 1 号 p. 11-15
金ナノ粒子は,その興味深い赤色から古くから着色顔料として用いられてきている。古い教会のステンドグラスはガラスの中で金がナノ粒子として存在しているもので,透明性が高く鮮やかな赤色を示している。金ナノ粒子の化学的研究の歴史も古く1857年に文献にあるFaradayの金コロイドの合成から始まる1,2)。金それ自体は古くから価値のあるものとして用いられてきており,バルクでは鮮やかな黄金色であるが,その色とコロイドにした時の色は全く異なっていた。そうした直接目に見える興味深い現象から始まって,金ナノ粒子は常に人々の興味の中心となってきた。特に,化学還元法で容易に得られることも研究がこれだけ進んだことの理由でもあろう。さらに,Brustらによるシングルナノレベルの金ナノ粒子の合成がNaBH4による還元によって可能となってきてから爆発的な量の研究が報告されるとともに,一段と金ナノ粒子研究のステージは上がった3)。最近の制御された金クラスターや新しい触媒など,金は人々の興味を掻き立てるのをやめない。この総説ではそうした金をベースとしたナノ粒子研究を俯瞰し,人々がひきつけられていく原因を探ってみたい。