新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大を受けて、各国がさまざまな情報通信技術(ICT)を活用した。ICT活用が感染症制圧に有効だった国が存在する一方、最初から投入を見送る国、期待された成果を上げられず苦戦する国もあった。本稿では、我が国の新型コロナ対策にICTを十分に活用できなかった要因として、感染症対策全体を俯瞰した戦略の不在により「木を見て森を見ず」の稚拙なICT導入が繰り返され、アジャイルソフトウェア開発で当然あるべきトライアンドエラーの繰り返しもなく実戦投入することとなり、新規投入されたシステムは操作性に課題があるにも関わらず慣熟訓練の時間が確保できなかったことを指摘する。これらの反省を踏まえて、今回得られた知見を生かしたデジタル変革の有り様について述べる。