日本では、食の多様化に伴って魚離れが進み、魚の消費の伸びは今後も期待できない中、国内屈指の養殖基地愛媛県も生産額の減少・停滞が続き、水産業の再興は喫緊の課題となっていた。一方、世界的には魚類養殖は海洋性タンパク質の供給を支える成長産業と位置づけられている。そうしたグローバルな視点を含めて地域水産業の振興に寄与するミッションを背負って、2008年に愛媛大学南予水産研究センターが発足した。同センターは県内養殖産業の中心地である愛南町に設立され、旧町役場と廃校になった小学校を大学の研究施設として活用するユニークな組織であり、産学官連携により実践的な研究を行う国内に類を見ない「レジデント型研究拠点」である。ここでは、南予水産研究センター発足の経緯や、水産分野では極めてユニークと言える地域産学官連携の研究スタイル、そうしたスタイルを形作った代表的研究や地域連携の取り組みなどについて紹介する。