学術の動向
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地球環境変動と人間活動 ─地球規模の環境変化にどう対応したらよいか─
水環境を含めた地球表層環境の進化と人間社会への影響
──地質年代境界イベントに入ってしまった現代
川幡 穂高
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2022 年 27 巻 2 号 p. 2_26-2_30

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抄録

 脱炭素社会への具体的な取り組みが成功しないと、二酸化炭素の排出に伴う「双子の悪魔」、地球温暖化と海洋酸性化の脅威が現実のものとなる。海洋酸性化の支配因子の中で大気中の二酸化炭素濃度上昇は第二の因子で、最重要の第一因子は速すぎる環境変化速度である。現代を表すのに新たな地質年代として「人新世」が提案されている。5500万年前の暁新世/始新世(P/E)境界を現代の炭素循環に対比すると、現代あるいは「人新世」は、実は地質年代の境界期に相当すると私は考えている。人新世がどこに向かうのかを予測することは私たちにとって初めての体験なので、誰にとっても予測は難しい。しかし、研究者はその専門性を生かして、さまざまな条件ごとに未来を推定することができる。最終判断を国民あるいは全人類が決める時に役立つよう、その推定シナリオを社会に提示することが研究者の使命と考える。

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