学術の動向
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地球環境変動と人間活動 ─地球規模の環境変化にどう対応したらよいか─
気候変動と人間社会の歴史的関係から学ぶ
──「変化」の速さに着目して
中塚 武
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2022 年 27 巻 2 号 p. 2_31-2_35

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抄録

 樹木年輪等を使った高時間分解能での古気候復元の進展で、気候変動の自然科学的メカニズムが理解されると同時に、気候変動が人間社会に与えた影響についても詳細に明らかになってきた。その中では「数十年周期」での気候変動の振幅拡大が飢饉や紛争を生み、やがて社会体制の転換を促すという普遍的なメカニズムの存在が示唆されている。前近代の農業社会では気候変動が農業生産量を変化させて社会に大きな影響を与えるが、「数年周期」の変動であれば穀物備蓄で対応でき、「数百年周期」の変動なら出生率の調整や技術開発に時間的余裕がある。しかし「数十年周期」の変動の場合は、気候環境の好適期に拡大した人口や生活水準が気候環境の悪化期に維持できなくなり社会が危機に陥ったと考えられる。これは温暖化を含む現在の地球環境問題と時間スケールも含めて同じ構図であり、その破滅的な影響を回避するために歴史の教訓に学ぶことが求められている。

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