2023 年 28 巻 1 号 p. 1_34-1_37
気候変動への対応を協議する際には、気候変動のことだけでなく、対処の際に関連してくるさまざまな副次作用についても十分考慮しながら、対処の妥当性を評価する必要がある。気候変動政策と他の社会課題の間でプラスの効果が生じる場合をシナジー、マイナスの影響が出る場合をトレードオフと呼ぶ。IPCC第3作業部会第6次評価報告書では、気候変動緩和策とSDGsの17のゴールとの間でシナジー・トレードオフを整理しており、まとまった知見を提供している。また、昨今の新型コロナウイルスへの対応と気候変動対策との関係についても、多くの知見が示された。今後、脱炭素に向けて気候変動対策がさらに他のゴールに及ぼす影響が増幅すると予想される中、シナジーとトレードオフへの配慮はさらに求められるようになる。先進国と、貧困からの脱却が必要な途上国とでも、求められる配慮は異なってくるだろう。