2023 年 28 巻 1 号 p. 1_85-1_89
量子ビーム利用の重要なキーテクノロジーの一つは加速器といっても過言ではなく、その加速器を桁違いに小型化させる可能性を持つのがレーザー加速である。将来的にレーザー加速器が実現すれば、学術面においては素粒子物理学などのビッグサイエンスが必要とする超大型加速器を現実的なサイズに抑えることが可能になると考えられている。また、産業や医療分野における量子ビーム利用の観点からは、電子線やイオンビーム、そしてそれらから二次的に生成される中性子やRI、更には高輝度X線やガンマ線の発生装置の小型化を通じて、安価で高品質な放射線の利用が可能になるとともに、性質の異なる複数の量子ビームを同時に利用できる新しい量子ビーム利用環境が実現できる可能性もある。本稿ではこのようなパワーレーザーで駆動する量子ビームがもたらす可能性やその実現に向けた課題などについて、最近の研究動向などを織り交ぜながら紹介する。