2023 年 28 巻 2 号 p. 2_48-2_52
韓国では2000年以降女性候補者クオータ制を実施してきた。国会から地方自治体議会選挙まで実施している点、小選挙区の3割・比例代表の5割以上を女性候補者に充てる点、比例代表名簿の奇数を女性候補者にするよう義務付けられている点、小選挙区女性候補者に公的選挙資金を補助する点(条件を満たす政党に配分)に特徴を持つ。20年間クオータ制を実施した結果、総じて女性議員の数は増えた。しかし、クオータ規定が完全に守られた場合に達成するはずの目標値からは程遠い。小選挙区3割女性クオータが法的な拘束力に欠けるので、政党が真剣に取り組んでこなかったからである。近年は、二大政党が政治を支配する構造が強まっており、多様な議員が政治に参画するツールとしてのクオータの機能も限定的になっている。せっかくクオータ制で議員になった女性たちが次の選挙で政党から公認を受けられず、キャリアが絶たれる課題も見えてきた。クオータ制のポテンシャルを生かすためには、実効性を担保する方法や、数値目標のみならず誰がクオータによる恩恵を受けることになるのかにも注意を払わなければならない。クオータ制の成功はクオータ制によって得られた機会が政治家の多様性を増進し、既成政治のあり方に変革をもたらしうるのかに掛かっている。政治的、制度的環境を同時に整える必要があることが示唆される。