学術の動向
Online ISSN : 1884-7080
Print ISSN : 1342-3363
ISSN-L : 1342-3363
28 巻, 2 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
特集
女性の政治参画を進める
  • 三浦 まり
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_19
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー
  • 中川 正春
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_20-2_21
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     議員連盟が主導し、2018年5月に成立した、パリテを目標とする理念法「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」は、2021年6月にはハラスメント対策など環境整備を政党や自治体に義務付ける法改正を実現。IPUモデルを参考にした衆議院での実態調査、各地方議会の諸対策の具体化が進展。しかし、直近二回の国政選挙で、女性候補者数は法律が目標とする5割には届いていない。今後は、主権者教育、さらなる環境整備、候補者擁立の促進などにより、国民の理解を増進。さらに、日本型のクオータ制の導入を、議員連盟の課題として模索していく。

  • 大倉 沙江, 江藤 俊昭
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_22-2_26
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     本稿では、筆者らが女性地方議員に対して実施した「議会活動における参画に関するアンケート調査」に基づき、女性議員が被りやすいいじめ・ハラスメントの特質について検討した。分析の結果、①心理的ハラスメントを中心として、81.0%が同僚議員から、76.2%が有権者から何らかのハラスメントを受けた経験がある、②21.4%は問責決議案や辞職勧告を出される、謝罪を求められるなどの「懲罰的な対応」を受けた経験がある、③懲罰的な対応を受けたことがある者の38.9%は、自らについて話し合いが行われる際に退場が言い渡され、十分に弁明の機会がなかった、④36.9%が会議規則に基づき議会運営委員会や代表者会議に出席ができないと回答していることが明らかとなった。少数派排除につながる制度は、合理的な理由から生まれたものが多い。しかし、その理由を離れて少数派排除につながることもある。少数派排除に対して、ルールの範囲を確定するとともに、問題があるルールの変更が求められる。

  • ──ジェンダーに配慮した地方議会の実践
    永野 裕子
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_27-2_33
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     地方議会における議員在任中の出産・子育てについては、実態把握も両立を可能とする環境整備もこれまで進められてこなかった。女性議員を増やそうと提唱されて久しい中で、女性議員が在任中に出産・子育てをする可能性も視野に置いた環境を整えることは当然に必要となる。しかしながら、議員の出産というだけで批判にさらされる状況から、議会での議論・取組が進まず、当事者も環境整備を求めることに注力してこなかった。

     調査からは、出産間近まで職務にあたり、早期に議会へ復帰しながらも、休憩場所もなく過重な負担がかかっており、殆どの議員がマタニティハラスメントを経験している結果であった。また、子の乳幼児健診・予防接種、保育にも困難が伴っていた。当事者・議会内で取組を進めることが難しい状況があり、政治分野における男女共同参画推進法やIPU「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」を論拠に、さらに実効性のある取組が求められる。

  • ───男女雇用機会均等法・育児介護休業法・ILOハラスメント条約を参考に
    内藤 忍
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_34-2_37
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     2021年に改正された「政治分野における男女共同参画を推進する法律」では、国・地方公共団体に対し、公選による公職等にある者及び公職の候補者について、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産に関するハラスメント等の予防・対応を講じることや、家庭生活との両立環境を整備することを義務化した。この改正にあたり参考とされたのは、労働分野の男女雇用機会均等法や育児介護休業法であるが、例えば、企業内に設置されている相談窓口に相談すると「不利益が生じる」「中立的で公正な窓口でない」と思われたりして、窓口がほとんど利用されていなかったり、法に基づき定められたハラスメント指針の各措置を履行していない組織を国が監督しきれていないなど、両法のハラスメント規定やその運用にも課題がある。本稿では、これら労働法の先行規定やその運用をめぐる課題を明らかにし、議会におけるハラスメント対策等への示唆を得ようとするものである。

  • ──候補者選定過程を中心に
    武田 宏子
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_38-2_41
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     イギリスにおいて女性議員が増加した過程では、二大政党である労働党と保守党が政権を奪還するという政党としての至上命題を成し遂げるために、代表性と包摂性、応答性を高めることを目的として、候補者選定過程の改革を行った。具体的には、労働党では「女性指定選挙区」という革新的な政党クオータ制、保守党では党本部が作成する「優先リスト」やプライマリー方式などが導入され、どちらの事例においても、党執行部の候補者選定過程に対する統制と影響力が強化されたと言える。他方で、クオータ制の導入に関しては、二つの政党の間でアプローチの違いが観察される。本稿では、こうしたイギリスでの候補者選定過程改革の事例を概観し、女性の記述的代表の量的拡大への含意を検討する。

  • ──政治による男女平等の推進
    糠塚 康江
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_42-2_47
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     女性の政治参画を促進するために、多くの国でクオータが採用されている。フランスでは、憲法院の1982年性別クオータ違憲判決が、ポジティブ・アクションの政治分野への導入を阻止してきた。その間フランスの女性議員率の低迷が続き、EU諸国の中で後れを取るに至った。男女の普通選挙制が確立し、法的処遇に形式的な違いがないにもかかわらず、女性の過少代表は厳然たる事実だった。その是正のために実質的平等を追求すると、形式的平等に違背する。パリテはこの思考回路からの脱却を可能にしたが、1982年の違憲判決を乗り越えるための憲法改正を必要とした。現在三つの方式で、パリテが適用されている。国会、地方議会双方で女性の量的進出は顕著であるものの、男女による権力の分有というパリテの理念からすると、女性のサブ化という質のパリテが問われなければならない。序列化された性の二元性が、補完性の女性への割振りとして政治分野において再生産されているのだ。

  • ──韓国のクオータ制からの示唆
    申 琪榮
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_48-2_52
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     韓国では2000年以降女性候補者クオータ制を実施してきた。国会から地方自治体議会選挙まで実施している点、小選挙区の3割・比例代表の5割以上を女性候補者に充てる点、比例代表名簿の奇数を女性候補者にするよう義務付けられている点、小選挙区女性候補者に公的選挙資金を補助する点(条件を満たす政党に配分)に特徴を持つ。20年間クオータ制を実施した結果、総じて女性議員の数は増えた。しかし、クオータ規定が完全に守られた場合に達成するはずの目標値からは程遠い。小選挙区3割女性クオータが法的な拘束力に欠けるので、政党が真剣に取り組んでこなかったからである。近年は、二大政党が政治を支配する構造が強まっており、多様な議員が政治に参画するツールとしてのクオータの機能も限定的になっている。せっかくクオータ制で議員になった女性たちが次の選挙で政党から公認を受けられず、キャリアが絶たれる課題も見えてきた。クオータ制のポテンシャルを生かすためには、実効性を担保する方法や、数値目標のみならず誰がクオータによる恩恵を受けることになるのかにも注意を払わなければならない。クオータ制の成功はクオータ制によって得られた機会が政治家の多様性を増進し、既成政治のあり方に変革をもたらしうるのかに掛かっている。政治的、制度的環境を同時に整える必要があることが示唆される。

  • ──ルワンダの経験
    遠藤 貢
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_53-2_56
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     ルワンダにおける女性議員の比率は、2020年段階で61.3パーセントと6割を超え、比率の上では世界第一位である。本稿では、それを可能にしているクオータ制を紹介するとともに、この制度の導入の背景と経緯、そしてその効果について多角的に検討する。ルワンダでは、ジェノサイド後、憲法で規定される形でのクオータ制が導入される以前から女性を一定程度優遇する新政策の策定がなされた。2003年憲法第75条に規定されたクオータ制を根拠として、女性の議員比率は向上してきた。ただし、その効果に対する評価は両義的である。また、クオータ制が「男女共同参画」的な視点から政治をとらえる上での有意な効果をもたらしたのかについても課題が残されている。加えて、アフリカでは権威主義体制下でのクオータ制の導入が進められるなどの政治的な文脈にも留意が必要である。

  • 三浦 まり
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_57-2_61
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     ジェンダー平等を推進していくには、ジェンダー平等政策を決定する国会・地方議会の運営や慣行においてもジェンダーへの配慮が欠かせない。列国議会同盟(IPU)は「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」を策定し、自己評価ツールキットを紹介し、各国議会に自己点検を促す。衆議院ではこのツールキットを活用し、2022年4~5月に全衆議院議員を対象にIPUジェンダー自己評価アンケートを実施した。本稿ではアンケート結果を紹介しつつ、どのような国会改革を議論すべきか、論点を提示する。ジェンダー平等を推進するには、選挙や政党におけるルールや慣行を見直すだけではなく、議会もまたジェンダー平等に資する機関となるよう自己変革が求められている。

  • 大沢 真理
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_62-2_64
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     本稿はまず、日本学術会議公開シンポジウム「女性の政治参画をどう進めるか?」の各報告で印象づけられた点をあげる。ついで、女性議員の比率が高いと政策・制度などがどのように異なるのか、諸国と日本に関する既往の分析を管見する。最後に、公選職ではないが地域防災会議の女性委員に着目する。その比率がゼロである自治体と10%を越える自治体で、避難所運営指針等の記述項目がいかに異なるか、2018年2月に実施した調査結果の一端を示す。防災会議の女性委員比率が1割を越えると、避難所で多様な人びとのニーズが応答される可能性が高い。

特集
感染症をめぐる 国際政治のジレンマ ─科学的アジェンダと政治的アジェンダの交錯─
  • 山田 高敬
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_65
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー
  • ──国際的な公正さは?
    勝間 靖
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_66-2_70
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     COVID-19ワクチンをめぐる国際協力のためにCOVAXファシリティが設けられた。しかし、ワクチンが無償で供与されているはずの低所得国では、接種率が低いままである。その原因に、ワクチン需要が供給を上回るなかでの、高所得国の「ワクチン・ナショナリズム」や、低所得国に住む高所得者の「ワクチン・ツーリズム」がある。自国民優先という短期的な視点と、世界の「すべての人が安全になるまでは、誰も安全ではない」という中長期的な視点とをバランスした公共政策が必要である。ワクチン・ツーリズムのほか、新興国による「ワクチン外交」については、国際的な倫理ガイドラインが求められる。また、ワクチン製造技術など、研究・開発から生じた知的財産権について、国際的な共有を求める声が高まっている。HIV/エイズで議論されたことが、COVID-19で再び俎上に載っている。対象や期間を限定せず、医薬品アクセスの国際的な公正さへ向けて、正面から議論を続けるべきであろう。

  • ──国際政治経済論の観点から
    古城 佳子
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_71-2_74
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     新型コロナ(COVID-19)感染の制御に不可欠なワクチンの配布をめぐり、公衆衛生と知的財産権の保護という二つの「地球公共財」の相克が問題となった。この問題は、既にHIV/AIDSの事例で問題となり、WTOのTRIPS協定をめぐり議論が起こり、公衆衛生を優先する規定が定められた。しかし、医薬品の配布について、二つの「地球公共財」のどちらを優先するかという点に関し、ステークホルダー間の見解は分かれたままであった。COVID-19ワクチンに関しては、WTOで特許権の一時的な停止が2022年に合意されたが、ワクチン製造企業や国が少数であることに起因するR&D企業とジェネリック薬企業との競争、ワクチン製造国によるワクチン外交の誘因、米中対立における技術移転の懸念などの国際政治経済的要因がステークホルダー間の協力を難しくしている。

  • ──権力移行と民主主義
    竹中 千春
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_75-2_78
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     パンデミック危機の過程で、政治学の分野では「パンデミック政治」と公衆衛生の政策論が注目された。新興大国のブラジル、ロシア、中国、インドはどう対応したか。米欧諸国と対立や緊張を抱えるロシアや中国は独自の政策を進め、国威をかけたワクチンの開発と生産を行い、「ワクチン外交」を繰り広げた。インドも自国製ワクチンを開発・生産し、アストラゼネカの生産拠点ともなり、ロ中と米欧日に分裂する世界における国益の増大をめざした。ユーラシアの三国の動向は、多くの途上国とともに、遠いラテンアメリカのブラジルにも深い影響を与えた。グローバリゼーション時代の「複合的危機」に襲われた国々で、国際主義や民主主義が動揺する。南アフリカも独自の問題を抱えているものの、他のBRICS諸国はイリベラル・デモクラシーや独裁に傾斜し、権力移行をめざす大国化の道を歩んでいる。危機の時代に、パンデミック後の「知」と新しい構想が求められている。

  • ──Anthropoceneの時代
    羽場 久美子
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_79-2_83
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     世界のコロナ感染は、2020年当初は9割、その後も半数が、欧州とアメリカに集中してきた。

     2023年1月現在、短期集中的には日本と中国が世界最大の規模で増えている。

     先進国がコロナ感染の影響をなぜ集中的に受けたのか、パンデミックや今後の世界人口動態を考えるにつけ、アジア・アフリカなど新興国と連携し、Anthropocene(人新世)における地球環境を重視し、国連のいうSDGs(持続可能な社会、だれ一人取り残さない)という政策を、先進国自身がとっていくこと、新興国を警戒し差別するのではなく、尊敬し重視し共存していくことこそが、いかに重要かを考える契機となっている。

  • ──行政学の観点から
    城山 英明
    2023 年 28 巻 2 号 p. 2_84-2_87
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症(COVID19)への対応に関しては、保健、医療、経済等を含めた幅広い分野横断的調整が必要とされている。国際的には、世界保健機関(WHO)だけではなく、世界銀行、国連本体等との調整が必要とされている。国内的にも、保健、医療分野だけではなく、経済等を含めた幅広い調整が必要とされている。このような課題に対して、国際的には、日本は保健と財政の連携の観点から一定の寄与をしてきたが、現在はより幅広い連携が求められていると言える。他方、国内的には、専門家レベルで医学、保健、医療関係にとらわれない幅広い分野横断的調整が求められ、関与する専門家メンバーの範囲は拡大したが、必ずしも有効には機能しなかった。専門家レベルだけではなく、省庁レベル、政治レベルでの調整との連携が必要とされていると考えられる。

日本学術会議を知る
地区会議の動向
学術の風景
表紙の画
SCJトピック
編集後記
エラータ
feedback
Top