抄録
岩手県の北上高地東側斜面では,2016年8月の台風第10号 (Lionrock) の上陸,通過にともなって記録的な豪雨と
なり,小本川,閉伊川の両流域を中心に土砂災害が発生した。災害をもたらした土砂移動現象の種類は,渓流域での渓岸崩壊および渓床堆積物の侵食による土砂流出が顕著であった。小本川流域における山地の堆積環境を目視観察したところ,渓流域は厚い堆積物に覆われるが,上部の山腹斜面は薄い表土層に覆われており,山腹斜面の保水性は低い状態であった可能性が考えられた。また台風の通過にともなう降雨の特徴として,極めて強い短時間降雨が挙げられた。以上をもとに今回の土砂移動プロセスを推定すると,台風通過時の短時間豪雨が山腹斜面の表土層で十分に保水されず,その多くが速やかに渓流域に流出して異常出水となった結果,渓岸崩壊や渓床堆積物の侵食を引き起こして大量の土砂流出につながったと考えられた。