東北森林科学会誌
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果樹生産地域における薪利用の実態と今後の利用可能性
―青森県五所川原市七和地区を事例として―
小笠原 碧山本 信次
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2017 年 22 巻 2 号 p. 49-53

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抄録

 福島第一原子力発電所事故以降,再生可能エネルギーの重要性が論じられてきた。本研究では木質バイオマスの中でも最も簡単に製造が可能であり,東北地方では今もなお伝統的に使用されている薪に着目した。果樹生産地域であり,果樹剪定枝を利用するため薪利用率が高いと思われる青森県五所川原市七和地区を調査地としてアンケート調査を行い,薪利用の実態や今後の薪利用の継続・増加の可能性を考察した。七和地区では薪使用戸数率は44.5%であり既往研究地間で最多であった。世帯主の職業は農家が多く,果樹園所有割合が高いため所有農地から主にりんご剪定枝を自己調達していた。既往研究である長野県伊那市と比較すると,この地域を始めとした東北地方では薪の購入割合は低い傾向がうかがえた。今後の薪利用の継続・増加のためには①薪の宅配や薪利用補助のサービスを行う②地域内外での薪の受け渡しを活発にさせる③公的資金を高性能薪ストーブの補助に充てる④余剰木材を他地域へ販売するといったことが必要と考えられる。

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