2016 年 33 巻 2 号 p. 165-172
デシカントロータ内で生じる熱・物質同時移動現象を可視化する一手段として,ロータ内の空気温度分布を測定し,その解釈を試みた.まず,最適回転数では,ロータの空気流れ方向の全域が再生温度に達しているわけではなく,空気流れ方向位置によって温度スイングの温度域と幅が異なることを確認した.また,パージ空気は,吸着空気と同じ方向で供給する必要があり,逆方向すなわち再生空気入口側からパージした場合には,ロータ内部で不都合な熱移動が生じ,パージによる吸着材冷却効果が消失する.さらにS 字形の吸着等温線を示す吸着材ロータでは,条件によって再生ゾーンで他と異なる傾向の温度変化が観察される.これは再生空気の相対湿度が,その流れにおいて吸着量が急変する相対湿度域に到達した際に生じる現象として理解される.以上,ロータ内温度分布は水蒸気吸脱着現象を色濃く反映し,デシカントロータ内の熱・物質同時移動現象の可視化手段として有用である.