抄録
チクングニアウイルスはトガウイルス科アルファウイルス属で, 東南アジアをはじめアフリカなどに広く浸淫している。ネッタイシマカおよびヒトスジシマカは, 本ウイルスの重要な媒介蚊である。ここでは, インドネシアで採取され, 実験室で継代飼育されたネッタイシマカ (スラバヤ株), およびヒトスジシマカ (マラン株) をfeeding法で感染させ, 両者の唾液腺における本ウイルスの成熟について電子顕微鏡観察を行った。感染後9日から12日の蚊では, ウイルス力価は最高値に達し, そのときの感染蚊の唾液腺細胞では空胞化が認められ, 細胞質内には膜構造に囲まれたウイルス結晶構造が多数認められた。それらの粒子は, 直径55~69nmで, 電子密な直径41~48nmの内部構造を有していた。Virionは, 唾液腺管腔内にも無数に遊離している像が観察された。両種の蚊には, 特に異なった形態学的所見はなく, いずれも感染蚊唾液腺細胞の細胞表面膜からの出芽所見は認められなかった。