特殊教育学研究
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大正期における原級留置の実態と特別学級の成立 : 新潟県U小学校の事例を中心に
戸崎 敬子清水 寛
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1989 年 27 巻 2 号 p. 11-23

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抄録

1923(大正12)年に劣等児の特別学級が設置された新潟県U小学校について、学業成績不良児と関連の深い原級留置児を学籍簿をもとに分析し、実態を解明するとともに、その背景、および特別学級成立と原級留置との関連を考察した。本論文では次の諸点が明かになった。1.U小では1921(大正10)年頃まで原級留置児が多い。2.原級留置児は1学年と5〜6学年で特に多い。その後の進路は低学年では進級、高学年では退学となる割合が高い。3.留置措置後「就学免除・猶予」となる事例では知的障害を推測できる成績不良児が多い。4.原級留置児の成績は算術が特に低い。しかし留置措置は教科全体の平均成績、操行、出席状況等を総合して決定されている。5.原級留置児の背景に、貧困な教育条件と児童の生活状況に規定される当校の低学力問題が存在している。6.当校の特別学級は、低学力問題に対する施策の一環として設置された。また学級設置によって、原級留置の基準が変化した。

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© 1989 日本特殊教育学会
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