特殊教育学研究
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27 巻, 2 号
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  • 齋藤 一雄, 星名 信昭, 斉藤 義夫
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、精神遅滞児のリズムの発達研究の一つとして、テンポへの同期をとりあげた。動作数で測定したパーソナル・テンポより速いテンポと遅いテンポの2種のテンポに分け、手拍子と歩行で同期させる課題を用いた。対象児はMAで統制した3〜6歳の精神遅滞児と対照群としての健常児の計88人である。その結果、それぞれ安定したパーソナル・テンポが測定でき、同期の成績もMAの増加にともなって向上することがわかった。特に、MA3・4歳間、5・6歳間で顕著な向上がみられた。健常児では、CA・MAの増加にともなって同期の成績が向上したが、精神遅滞児のCAでみたときは一定の傾向はみられず、むしろMAおよびIQとの関連が強かった。また、手拍子と歩行という反応モダリティによる違いは、手拍子のほうが歩行よりもよい成績を示した。手拍子ではMA6歳で2種のテンポに同期できるようになった。一方、歩行では7歳以降になると考えられた。
  • 戸崎 敬子, 清水 寛
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 11-23
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    1923(大正12)年に劣等児の特別学級が設置された新潟県U小学校について、学業成績不良児と関連の深い原級留置児を学籍簿をもとに分析し、実態を解明するとともに、その背景、および特別学級成立と原級留置との関連を考察した。本論文では次の諸点が明かになった。1.U小では1921(大正10)年頃まで原級留置児が多い。2.原級留置児は1学年と5〜6学年で特に多い。その後の進路は低学年では進級、高学年では退学となる割合が高い。3.留置措置後「就学免除・猶予」となる事例では知的障害を推測できる成績不良児が多い。4.原級留置児の成績は算術が特に低い。しかし留置措置は教科全体の平均成績、操行、出席状況等を総合して決定されている。5.原級留置児の背景に、貧困な教育条件と児童の生活状況に規定される当校の低学力問題が存在している。6.当校の特別学級は、低学力問題に対する施策の一環として設置された。また学級設置によって、原級留置の基準が変化した。
  • 石原 保志, 塚越 浩和, 西川 俊, 小畑 修一
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 25-37
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児の教育現場で字幕入りテレビ番組を利用する際に、字幕の文字量と呈示時間は内容理解に大きな影響を及ぼすと考えられる。本研究では、字幕読み取りと映像注視の時間を確保するための方法として、呈示時間を延長した場合の有効性を、字幕の文字量、番組の性質、視聴者の読書力との関連で検討した。対象は聾学校中学部、高等部生徒とし、呈示時間延長の方法としてスロー呈示、交互呈示の2方法を取り上げた。その結果、次のことが明らかになった。(1)ドラマのように人物の心情の推移が内容展開の中心となる番組では、文字量の確保が重要な意味をもつ。(2)ドキュメンタリーのように場面当たりの文字量にあまり差がない番組では、全体の文字量が多い場合、呈示時間延長の効果がある。(3)理科実験番組では、呈示時間を延長し字幕と映像を集中して見させることが内容理解を局める。
  • 岡 茂
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    身体虚弱児の自己認知を把握することは、虚弱児教育における基礎条件の一つである。児童の自己認知は、子どもの諸側面に対する保護者の認知、取り扱い、期待などと密接に関連するので、本研究では虚弱児をもつ親の認知を明らかにした。但し、本稿では虚弱の概念をかなり広義に規定し、虚弱と認知する親に関する資料を用いた。同時に、健康に関する親子間の認知の差異とその要因を検討した。一般校の児童と保護者を対象とし、質問紙調査を実施した。能力的側面の認知が生活目標への期待に大きな影響を及ぼし、能力の認知は健康の認知に強く規定されることが明らかになった。健康の認知に関して親子間に4種類の型が見出された。親のみが虚弱と認知する群が最も消極的・否定的な態度・評価を示し、逆に親のみが健康と認知する群が最も積極的・肯定的な態度・評価を示した。
  • 阿部 芳久
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 49-55
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本事例では、自閉児を対象にして、生活場面で機会利用型指導法を適用し、書字による要求言語を形成した。その後、指導成果の般化の状態から、要求言語形成、及び般化を促進するための先行要件について検討した。その結果、次のことが指摘された。要求実現のために大人を意図的に利用することが学習されていない自閉児に対しては、般化促進技術について論議する以前に、まず、要求充足者との依存関係を成立させることが必要であり、その後に、要求実現のための、充足者への働きかけの手段を豊富にしてやることが不可欠である。さらに、反応般化を促進させるためには、要求言語行動の一部となる語をできるだけ多く、あらかじめ形成しておくことが重要である。
  • 村上 由則
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ダウン症児の構音障害の原因に関しては様々な仮説が提出されているが、未だ一致した見解はなく、臨床的対応もまちまちである。ここでは、1名のダウン症児の復唱の改善経過を報告する。このダウン症児は、単音節の構音は良好であるが、音節の増加にともない構音障害が著しくなる。ことに語頭音の崩壊が顕著である。これは、音声の認識障害や構音すべき音を保持できないといった記憶障害が原因ではなく、構音企画過程の異常によると推測された。この事例に対して、(1)楽器音や絵カード・色カードを用いての視覚および動作を補助手段とした継時出力の訓練、(2)使用頻度の高い文を記したカードやメモリードラムを用いての動作-構音の対応による構音機能の改善訓練、(3)日常会話における正しい構音モデルの提示による構音訓練を4ヵ月間ほぼ毎日実施した。この結果、復唱の改善がみられたほか、自由発話も非常に聞き取りやすくなった。
  • 宮武 宏治, 高原 望, 足立 由美子
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    障害児教育において用いられている連絡帳の意義と使用状況を明らかにするために、盲、聾、養護学校及び特殊学級あわせて、1,190名の教師から得られたアンケート調査結果を分析した。80%以上の教師が必要かつ有効であると答えた。意義として、親との心情的な交流を作る、子どもの情報を交換しあう、指導の一貫性を築く、記録として等をあげている。問題点は記述時間の保障がない、内容に偏りができる、一方通行による危険などがあげられた。使用率は全体の90%近くの教師が用いているが、特殊学校では小、中、高と一貫して常時使用されているのに対し、特殊学級では学年の上昇とともに使用率が下がる。特殊学校、学級ともに自由に記述できる市販のノートを用いているところが多い。加えて特殊学校では「生活リズムの記録」を用いているところが30%ほどある。連絡帳は学校側で準備され、使用後は家庭で保管されることが多く、記録としての課題が残る。
  • 加藤 靖佳, 吉野 公喜
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、重度聴覚障害者の音声におけるホルマント周波数の時間的変化、すなわちホルマント遷移の特徴を解明することを目的とした。重度聴覚障害者3名、健聴者3名を対象に、単母音/V/及び2連母音/VV/の検査語音を用いて被験者の音声を音響的に分析した。単母音は音声の定常部分、二連母音は遷移部分を切り出し、分析に用いた音響パラメータは第1ホルマント、第2ホルマント周波数であった。ホルマント抽出にはケプストラム及びリフタードスペクラム分析を用いた。結果は以下の通りであった。1.F_2の始まりと目標周波数は、被験者によって異なっていた。2.聴覚障害者群のF_2の遷移幅は、健聴者群と比べて小さかった。3.聴覚障害者群における母音別のF_2の目標周波数は、3母音(/i/,/e/,/a/)ともほぼ同一の周波数を示していた。
  • 松村 多美恵
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 83-96
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    多くの研究にもかかわらず、短期記憶と知能レベルの関係に含まれる原因的要因についてはほとんど知られていない。本稿では記憶の構造的要因と制御過程およびメタ記憶に焦点を当て、精神発達遅滞児・者の記憶に関する最近の研究を展望した。この領域の初期の研究において、Ellis(1963)は彼らの記憶成績の劣弱の原因は構造的限界にあるとした。その後1970年には、その原因は制御過程の障害にあるとする主張が一般的になり、1970年代の後半以降になると記憶方略に関する種々の訓練が実施された。その結果、訓練の直接的な効果やその維持は認められたが、般化については疑問視された。そして、1980年代になると般化が可能となるためにはメタ記憶が必要であることが指摘され、とくに実行機能に焦点を当てた訓練の有効性が認められた。しかし、その一方で制御過程や実行過程だけでは劣弱の原因を説明できず、構造的限界を指摘する研究も最近多く報告されている。
  • 山田 欣徳
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
  • 迫 ゆかり
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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