本研究は、重度聴覚障害者の音声におけるホルマント周波数の時間的変化、すなわちホルマント遷移の特徴を解明することを目的とした。重度聴覚障害者3名、健聴者3名を対象に、単母音/V/及び2連母音/VV/の検査語音を用いて被験者の音声を音響的に分析した。単母音は音声の定常部分、二連母音は遷移部分を切り出し、分析に用いた音響パラメータは第1ホルマント、第2ホルマント周波数であった。ホルマント抽出にはケプストラム及びリフタードスペクラム分析を用いた。結果は以下の通りであった。1.F_2の始まりと目標周波数は、被験者によって異なっていた。2.聴覚障害者群のF_2の遷移幅は、健聴者群と比べて小さかった。3.聴覚障害者群における母音別のF_2の目標周波数は、3母音(/i/,/e/,/a/)ともほぼ同一の周波数を示していた。
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