本稿は、精神発達遅滞を伴う脳性まひ児(K.Y.児)に立位・歩行の獲得を目的とする訓練を実施した事例研究である。ここでは主として、膝立ちや立位の訓練において子どもに腰や下肢に力を入れさせる場合、床に対して平行な外力に対処するような入れ方がよいのか、それとも床に垂直な力を入れさせるのがよいのかについて検討された。そして、平行な外力に対処させるための訓練としてはバランス保持訓練が用いられ、垂直な力を入れさせる訓練として動作訓練(踏んばり、踏みしめ、踏みつけ訓練)が用いられた。今回の訓練結果をみる限り、床に対して垂直な力を入れる動作ができるようになることと立位・歩行動作の獲得との間に関連があることが示唆された。また、その子に適した範囲内であれば子どもは不安定な状態から安定状態へと向かって主体的な努力を開始し、その努力が立位や歩行の獲得へとつながることが確かめられた。