特殊教育学研究
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不登校を伴う社会的引きこもり児に関する社会的スキル訓練
高下 洋之杉山 雅彦
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1993 年 31 巻 2 号 p. 1-11

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抄録
社会的引きこもりを有する児童は、しばしば不登校などの問題を併せ持つことがある。従来の行動療法では、登校行動の形成に主な関心がおかれ、そういった引きこもり行動の変容に注目されることが少なかった。本研究では、対人場面で顕著な引きこもりがみられた不登校児に対し、社会的スキル訓練を行い、引きこもり行動の変容を図った。訓練は2期に分けられ、以下の3段階のステップをふみ行われた。1)社会的相互作用の分析を通して行われる行動アセスメント、2)標的行動の選定、3)モデル提示、フィードバック、シェイピングからなる社会的スキル訓練。訓練第I期では、標的行動として自己主張行動が選定された。訓練の結果、自己主張行動が獲得され、相互作用の頻度が高まったが、相互作用の中で、対象児と他児との間の言語的やりとりが連続するようにはならなかった。そこで第II期では他者賞賛行動が標的行動とされ、訓練が行われた。その結果、他者賞賛行動が獲得され、対象児と他児との間の言語的やりとりが連続するようになり、引きこもり行動はみとめられなくなった。同時に不登校の問題も改善された。
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© 1993 日本特殊教育学会
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