2011 年 49 巻 3 号 p. 293-303
本研究では、自発的な機能的コミュニケーション行動に乏しい自閉性障害児1名を対象にPECSによる文の構成を指導し、家庭場面におけるPECS使用の般化について検討した。その結果、対象児は、日常生活中のコミュニケーション機会においてPECSが使用可能になり、修飾語や目的語を使用した要求が増加した。生態学的アセスメントに基づく絵カードの作成により、家庭場面における自己決定の機会が増加し、絵カード1枚で要求していたときよりも、要求機会の多様性が拡大した。以上のことから、家庭でのPECSの使用機会を生態学的アセスメントに基づいて段階的に拡大したことや、より複雑な表現スキルの獲得によって、日常生活場面での自己決定の機会の拡大や、対象児の家庭での役割が確立されるという家庭生活の変化がもたらされたと考えられた。今後の課題として、より抽象的な内容や、フェイズV以降の具体的な指導手続きの検討が挙げられた。