2012 年 50 巻 4 号 p. 403-411
本稿では、自閉症スペクトラム障害児・者と暮らす家族が抱える特徴的な問題を整理し、それらを踏まえて家族への支援の方向性を明らかにした。自閉症スペクトラム障害児・者の家族が抱える心理的な問題は、自閉症スペクトラム障害児・者の行動への理解や対応の難しさと関連していた。また、これに自閉症スペクトラム障害への社会の理解の不足によって引き起こされる家族の否定的な感情が複雑に絡み合い、その結果、自閉症スペクトラム障害児・者を含めた家族の生活を制約していくという一連のつながりが示された。自閉症スペクトラム障害児・者の家族の問題を改善していく糸口となるのは、家族が自閉症スペクトラム障害児・者への対応を身に付け、自信をもつことである。そのためには、家族が自閉症スペクトラム障害児・者の指導や支援に主体的に参画することが重要となることが示唆された。