抄録
中国の障害児教育はこれまでおもに、教育を普及させることを目的に、教育形態を多様化する等の施策により取り組まれてきた。しかし、学齢期の障害児童の約3~4割は未就学である。障害児童の義務教育の普及を図ると同時に、2003年以降インクルーシブ教育の導入を検討し始めた。2008年には国連の「障害のある人の権利に関する条約」を批准、2010年には国家の教育方針として、児童の教育を受ける権利の保障を掲げ、これまで以上に権利保障の重要性を強調するようになっている。この教育を受ける権利の保障にむけて中国は、世界のインクルーシブ教育の実効性を分析すること等を通じて、自国の状況に適した教育を創造しようとしている。障害児童の教育を受ける権利保障の実現には、“随班就読”の充実を含む教育環境の整備を図ると同時に、多様性を尊ぶ社会環境づくりが求められる。