抄録
本稿では、一人ひとりの子どものニーズに応じた教育、さらには家庭・地域との連携・協働が求められる特別支援教育の時代にふさわしい寄宿舎教育のあり方を展望するために、今日の寄宿舎教育研究の動向と課題を明らかにすることを目的とした。寄宿舎教育に対する国・文科省の動向は、2001年の「21世紀の特殊教育の在り方(最終報告)」において一定の教育的意義は認めていたが、明確な方向性は示されていない。設置者である都道府県では寄宿舎統廃合が進んでいる。しかし寄宿舎教育研究においては、障害児とその家族の実態や生活と発達との関係性についての実証的研究がほとんど行われていないために、特別支援教育における寄宿舎の教育的意義を十分に明らかにするまでに至っていない。多くの保護者は「多様なニーズに対応する寄宿舎」を求め、教育内容においては「子どもの自立や社会性の獲得」を求めている。家庭・地域との連携・協働が求められている特別支援教育の時代であるがゆえに、寄宿舎を子どもの生活と発達保障の場として特別支援教育に位置づけ、そのための教育条件整備を進めていく必要がある。