2015 年 53 巻 1 号 p. 1-13
自閉症児に対して、話者の不明確な発話への明確化要求の表出を目的として、おやつと工作の相互作用場面の構造化を図った共同行為ルーティンによる指導を行った。その結果、指導開始時には指導者の「それとって」といった曖昧な指示に対して適切な応答がみられなかったが、注意喚起、言語モデル提示といった段階的援助を導入したことにより、曖昧な指示に対して自発的に明確化要求を表出することが可能となった。加えて、対人・対物般化、家庭における明確化要求の般化が確認された。さらに、指導者の視線の方向を手がかりとして、指導者の欲求意図を推測しながら明確化要求を表出できることも示された。以上から、共同行為ルーティンを用いた指導は、話者の不明確な発話に対する明確化要求の表出を促進する上で有効であると考えられた。また、明確化要求の表出は、「心の理解」における他者の欲求意図理解の発達と密接に関連している可能性が推察された。