2015 年 53 巻 1 号 p. 15-24
本研究では、中学1~3年生(625名)を対象に、英単語の綴りテストと基礎スキル(ローマ字の書字、音韻意識、英単語検索)テスト、言語性ワーキングメモリ(WM)テストを実施し、英単語の綴り困難のリスク要因を検討した。綴りテストの成績が10パーセンタイル以下を綴り困難、11パーセンタイル以上を綴り非困難とした。基礎スキルテストと言語性WMテスト成績の学年間の差を検討した結果、綴り困難者と非困難者では、英単語検索・ローマ字・音韻意識(二重母音)スキルの習得過程が異なることが明らかになった。また、綴り困難者の生起について多重ロジスティック回帰分析により検討した結果、ローマ字の書字スキルは全学年でリスク要因となった。言語性WMは1・2年生で、二重母音スキルと英単語検索スキルは2・3年生でリスク要因であった。英単語の綴り困難に関与するリスク要因は学年によって特徴的であるため、学年ごとのリスク要因に応じた支援の必要性を指摘した。