特殊教育学研究
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原著
発達障害児における文章中に矛盾する手がかりがある場合の感情推測方略の変容
塚本 匡竹内 康二
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2015 年 53 巻 3 号 p. 155-164

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抄録
3名の発達障害児(知的な遅れのないASD児、LD児、知的障害のあるASD児)を対象に、文章に記載された矛盾場面における他者感情の推測の方略と、それを強化する聞き手の影響について検討した。状況・表情・ことばの3つの手がかりで構成された文章のうち、同時に2つの異なる感情語を選択できる矛盾文章を参加児に提示し、登場人物の気持ちと、そのように考えた理由を尋ねた。訓練期では、手がかりの一部分に基づく反応を消去し、手がかり間の矛盾を示す言語プロンプトやモデルプロンプトによって、矛盾の統合的な理解の方略を強化した。その結果、すべての参加児は、矛盾文章に対して統合的な理解の方略を試みるようになった。正誤のフィードバックの有無に応じて、参加児の行動は鋭敏に変化したことから、矛盾場面における他者感情の推測の方略は、障害特性だけでなく、その聞き手という環境要因にも影響されることが示唆された。
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© 2015 日本特殊教育学会
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