2020 年 58 巻 1 号 p. 1-9
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy; DMD)の生命予後の改善と機能予後への期待に伴い、学校卒業後を含む長期的予後を見据えた学校教育のあり方に関する検討が求められている。本研究では、DMD児の長期的予後を見据えた教育課題について検討するために、DMD成人に対して包括的かつ多次元的なQOL尺度(WHOQOL26)を適用し、主観的QOL の傾向を分析した。その結果、DMD成人のQOL平均値は一般人口と同等であること、疾患の進行に伴う医療介護度の増大は身体的領域のQOLを低下させる一方で他の領域のQOLは維持される可能性があること、全体的なQOLに寄与する領域は唯一心理的領域であることが示唆された。検討結果より、DMD児の長期的予後を見据えた教育課題として、個に応じた環境の模索と構築および肯定的な自己概念の育成の重要性を指摘した。