抄録
症例は2型糖尿病の58歳,女性.5年前から治療を中断していた.耳掻きによる右外耳道損傷後に緑膿菌による悪性外耳道炎,および中耳炎を起こし,約1カ月の入院治療にて軽快した.約4ヵ月後に約半月かけて右第II・III・IV・V1枝・VI・VII・IX・X脳神経障害が完成した.広範な一側脳神経障害でGarcin症候群と診断した.耳漏の培養で緑膿菌が検出された.造影したT1強調脂肪抑制画像で中耳炎から波及した頭蓋底の広範な化膿性骨髄炎であることが判明した.病初期は第III・VI麻痺のみを認め,糖尿病性脳神経障害と考えた.頭蓋底骨髄炎の診断に脂肪抑制の造影MRI検査が有用であると考える.糖尿病の易感染性により,時に稀な病態をきたしうることを示唆する症例と考え報告する.