2006 年 49 巻 9 号 p. 717-721
症例は24歳の女性.22歳で高血糖を指摘され,抗GAD抗体強陽性(3.854 U/ml),インスリン分泌能の低下から1型糖尿病と診断された.インスリン療法を開始後3カ月で自己中断したが,歯性上顎洞炎を契機に再開するまで約1年3カ月の間,急性合併症を起こさなかった.2年後,妊娠を契機に精査したところ,抗GAD抗体は陰性で,インスリン非依存状態であった.分娩後も同様の結果であった.本症例のHLAハプロタイプは,DRB1*1502-DQB1*0601ホモと疾患抵抗性であり,このことが特異な経過に関連すると考えられた.糖尿病の病型診断を考える上でも興味深い症例と考え,報告する.