抄録
糖尿病末梢神経障害の実態と臨床診断におけるアキレス腱反射の有用性を明らかにするために,東北6県448医療機関と共同で入院・通院中の糖尿病患者を対象とした調査を行った.調査に当たっては独自に作成した「糖尿病患者調査票」を用い,自覚症状とアキレス腱反射検査は必須,振動覚検査は適宜実施とした.2003年2∼9月の期間に,総計14,744症例(年齢:64.2±11.9歳,罹病期間:9.7±7.7年,HbA1c: 7.4±2.5%, いずれも平均±標準偏差)のデータを得た.自覚症状,アキレス腱反射の低下あるいは消失,振動覚低下の発現率はそれぞれ18.8%, 40.3%, 52.0%であった.糖尿病神経障害の発現頻度は,主治医の総合的判断では27.6%, 「簡易診断基準」を適用した場合では35.8%であった.アキレス腱反射の低下・消失は自覚症状に比べて糖尿病発症早期から発現し,また,その発現率は自他覚所見「なし」群に比べて「あり」群において,有意に高率であった.アキレス腱反射は外来で手軽にできる簡便な検査であるが,糖尿病神経障害診断における有用性が示唆された.