2008 年 51 巻 6 号 p. 523-529
前立腺癌に対するアンドロゲン抑制療法(androgen-deprivation therapy: ADT)治療中に血糖の増悪を来した3症例を経験した.3症例はいずれも,2型糖尿病を基礎疾患にもつ男性で,前立腺癌に対して2剤以上のADTを行った数カ月後に著明な高血糖を生じた.3例中2例は,高血糖に対してインスリン療法を行った.3症例ともホルモン製剤を中止後,糖尿病の改善を認めた.したがって,糖尿病患者において前立腺癌に対するADTを行う際には,糖尿病の増悪に十分な注意を払うことが必要と考えられる.ADTによる高血糖誘発のメカニズムを考察する.