2009 年 52 巻 6 号 p. 457-462
症例は75歳,男性.健康診断を受けたことがなく,糖尿病は長期間放置状態であった.発熱,全身倦怠感を主訴に2007年3月末に入院した.随時血糖592 mg/dl, HbA1c 12.0%, 体温38.6°C, 白血球15,900/μl, CRP 28.4 mg/dl, 胸部CT検査では胸水と空洞を伴った多発結節影を両側に認めた.腹部CT検査では前立腺膿瘍を認め,血液,喀痰,前立腺膿瘍の穿刺液の培養にて,それぞれStaphylococcus aureusが同定された.そのため尿路感染を契機とした前立腺膿瘍が塞栓源となり,敗血症性肺塞栓症を発症したと診断した.血糖コントロールと抗生物質投与,前立腺膿瘍ドレナージ,経皮的膀胱瘻造設により発熱,炎症所見,前立腺膿瘍,敗血症性肺塞栓症は改善した.本症例は健康診断を受けず糖尿病の存在に気づいていなかったことが一番の問題点であり,糖尿病の早期発見の重要性を再認識した症例である.