抄録
症例は56歳,男性.各種インスリン製剤をはじめとし,多剤薬剤アレルギーをもつ2型糖尿病の治療に関して,血漿中にほとんど流入しないと考えられているボグリボースを食後高血糖の改善のために開始したが,投与前の好中球数1,498/μlから投与開始7日後に408/μlまで減少した.9日後に172/μlまで更に減少したことで同薬を中止.以後,好中球数は改善傾向を認め、中止4日後に780/μl, 中止後8日後では好中球2,293/μlまで改善した.ボグリボース投薬中は食後高血糖の改善が認められたが,好中球数減少のため中止を余儀なくされた.医療機関から製薬会社へのボグリボースによる白血球減少,または好中球数減少に関する報告は13症例認めており,2006年5月に添付文書において顆粒球減少症(好中球減少症と同義)が追記されたが,好中球数減少に至る経過や機序に関しての文献的報告はこれまでになく,貴重な症例と考え報告する.