抄録
症例は35歳,女性.初診の3年前の健康診断では異常を指摘されなかった.初診の1ヶ月前より口渇,体重減少が出現し,同3日前に他院で高血糖を指摘され,2005年10月に当科紹介となった.初診時空腹時血糖213 mg/dl,HbA1c 11.1%,尿中ケトン体陽性を認め,1型糖尿病を疑い即日入院となり,インスリン治療を開始した.血清学的に抗GAD抗体は陰性,抗IA-2抗体は1.9 U/mlと陽性所見を認め,尿中CPRは感度以下で,1型糖尿病と診断した.退院後,外来経過観察中にインスリン(insulin aspart Mix 30)1日投与量は8単位まで減量でき,血糖コントロールは良好であった.しかし2007年1月,血糖コントロールが再び悪化し,その際に抗IA-2抗体は陰性化,抗GAD抗体は12.3 U/mlと陽性化を認め,食後2時間CPRは0.51 ng/mlと著明に低下していた.HLA typingではDR4,DR13を有していた.本例は,インスリン依存状態への移行と,膵島自己抗体の変化を観察しえた貴重な一例と考えられた.