2010 年 53 巻 8 号 p. 626-630
症例は30歳女性.10歳時学校健診で尿糖陽性を指摘され,高インスリン血症,黒色表皮腫の存在,赤血球インスリン受容体結合率低下により,インスリン受容体異常症A型と診断され,IGF-1治療を開始された.その後同剤にボグリボース0.6 mgを併用するもHbA1c 8-10%と血糖コントロール不良であった.一時的改善はあったが2007年2月頃から再度不良となったため,同年2月当院に入院した.IGF-1にビグアナイド薬,チアゾリジン誘導体を各々併用投与下,またインスリン単独投与下の朝食負荷試験を施行し,血糖とインスリン分泌能を測定した.食後血糖が比較的良好だったIGF-1とビグアナイド薬との併用療法を採用して退院した.退院後はHbA1c 6%前半を保持している.小児期から思春期という血糖コントロールの困難な時期をIGF-1治療に適宜経口血糖降下薬を併用した現在30歳のインスリン受容体異常症A型の長期治療経験を報告する.