糖尿病
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53 巻, 8 号
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原著
  • 森 雄作, 山本 剛史, 徳野 杏奈, 平野 勉
    2010 年 53 巻 8 号 p. 593-600
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    糖尿病では食後高脂血症とsmall dense LDL(sdLDL)の増加が特徴的であるが,この両者間の関係は未だ明らかではない.我々はアポ蛋白B48(B48)を食後高脂血症のマーカーとしてsdLDLとの関係を調べた.正常耐糖能17名と2型糖尿病27名にテストミールAを負荷し,前後1,2,4,6時間でB48,トリグリセリド(TG)を測定し,増加面積incremental area under the curve(iAUC)を求めた.糖尿病ではB48,B48 iAUC,TG,sdLDL-コレステロール(C)が有意に高値,リポタンパクリパーゼが低値であった.sdLDL-CはB48 iAUC,TG,TG iAUCと単相関したが,重回帰ではB48 iAUCとTGのみが有意な独立変数であった.本研究から食後高脂血症が高TG血症と独立してsdLDL増加の原因となることが示唆された.
  • 矢野 正生, 山門 實, 五十川 陽洋, 柴 輝男
    2010 年 53 巻 8 号 p. 601-606
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    人間ドック受診者1485名(22~89歳)を対象に,75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)をgold standardとし,HbA1c単独およびHbA1cと空腹時血糖(FPG)組合せ測定による糖尿病スクリーニングの感度および特異度を検討した.推奨HbA1cカットオフ値を6.1%(JDS値)としたとき,感度56.6%,特異度98.5%となった.receiver operating characteristic(ROC)分析で求めた最適カットオフはHbA1c値6.0%,FPG値 106 mg/dlであった.HbA1c ≧6.0%とFPG≧106 mg/dlを組合せると,糖尿病型に対する検出感度は94%と著明に上昇したが,特異度は92%とやや低下した.一方,全対象者の27.5%が境界型であり,境界型に対する検出感度はいずれも40%未満であった.HbA1c単独による糖尿病スクリーニングでは,4割以上の糖尿病型を見逃すおそれがあり,FPGと組み合わせる必要が示唆された.
症例報告
  • 中村 晃, 安田 尚史, 明嵜 太一, 原 賢太, 永田 正男, 横野 浩一
    2010 年 53 巻 8 号 p. 607-612
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    【症例】41歳男性.9歳で1型糖尿病を発症し,39歳時に膵腎同時移植され当院通院中であった.2008年1月より発熱と胸痛をきたし,胸部Xp,CTで両肺に空洞を伴う結節影を多数認めた.MMF,FK 506,mPSLを服用中で,日和見感染を疑い精査加療のため1月15日入院となった.血液,喀痰,髄液培養からは原因菌は同定されず,WBC 10400 /μl,CRP 1.14 mg/dl,ESR26 mm/h,β-グルカン<4 pg/ml,アスペルギルス抗原(-),カンジダ抗原2倍でクリプトコッカスN抗原256倍であったため肺クリプトコッカス症を疑いホスフルコナゾールを開始するとともにミコフェノール酸モフェチルは中止した.治療開始後,解熱して画像上浸潤影は軽快し,クリプトコッカス抗原は緩徐に減少した.1型糖尿病に対する膵臓移植療法は有用な治療であるものの,免疫抑制剤内服に伴い日和見感染をきたす可能性があり,本症例は示唆に富む症例と考え報告する.
  • 山本 恭平, 柳本 沙奈美, 久保田 暁彦, 寺野 隆, 服部 憲幸, 森田 泰正, 横手 幸太郎
    2010 年 53 巻 8 号 p. 613-618
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性.2009年10月8日より口渇著明となり15日嘔吐後来院.血糖値652 mg/dl,血中ケトン体2500 μmol/l以上,尿中ケトン体(3+),動脈血ガス分析ではpH 7.163と代謝性アシドーシスを認め,糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKAと略す)と診断した.入院時腹痛なく,腹部CTでも膵臓に所見は認めなかった.第2病日より不隠となり腹痛を訴えたため急性膵炎を疑い諸検査施行したところ,アミラーゼ720 IU/lと上昇し,中性脂肪(以下TGと略す)6138 mg/dlと高値が判明した.腹部CTにて膵腫大,膵周囲及び前傍腎腔に炎症所見が認められ,重症急性膵炎と診断された.大量輸液,インスリン持続注入,抗生剤投与,蛋白分解酵素持続静注療法といった通常の治療に加え,炎症性サイトカイン吸着目的で持続的血液濾過透析(以下CHDFと略す),TG除去のために血漿交換(以下PEと略す)を施行したところ,急速にTGは低下し臨床症状は改善した.DKAに高中性脂肪血症を伴い,その結果急性膵炎が誘発されたと考えられた症例であり治療にはPEが有用であった.
  • 木下 淳, 森本 彩, 川浪 大治, 井坂 剛, 竹下 雅子, 内潟 安子, 田嶼 尚子, 宇都宮 一典
    2010 年 53 巻 8 号 p. 619-625
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性.60歳時に糖尿病と診断され,64歳時に経口血糖降下薬を開始.69歳時にHbA1c 9.7%と増悪し,強化インスリン療法が導入され,血糖コントロールは改善した.しかし,71歳頃からHbA1c 8.6%と再び悪化し,他院入院精査でインスリン抗体陽性と即時型局所インスリンアレルギーを認めた.皮内試験で最もアレルギー反応の軽度な超速効型インスリンリスプロに変更し,Miglitol内服を併用したが血糖値は不安定で,持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion,以下CSII)を導入.しかし,早朝の低血糖と日中の高血糖が持続したため,持続血糖モニター(continuous glucose monitoring,以下CGM)を用いた精査加療目的で当科紹介受診・入院.CGMで詳細な血糖変動を確認しつつCSIIを中止し,インスリン総投与量を67.3単位から40単位に減量した.インスリン抗体陽性でインスリンアレルギーを合併し,CGMが治療法の構築に有効であった糖尿病を経験したので報告する.
  • 原田 真耶, 内潟 安子, 片岡 菜奈子, 三浦 順之助, 望月 弘, 柳沢 慶香, 佐倉 宏, 岩本 安彦
    2010 年 53 巻 8 号 p. 626-630
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性.10歳時学校健診で尿糖陽性を指摘され,高インスリン血症,黒色表皮腫の存在,赤血球インスリン受容体結合率低下により,インスリン受容体異常症A型と診断され,IGF-1治療を開始された.その後同剤にボグリボース0.6 mgを併用するもHbA1c 8-10%と血糖コントロール不良であった.一時的改善はあったが2007年2月頃から再度不良となったため,同年2月当院に入院した.IGF-1にビグアナイド薬,チアゾリジン誘導体を各々併用投与下,またインスリン単独投与下の朝食負荷試験を施行し,血糖とインスリン分泌能を測定した.食後血糖が比較的良好だったIGF-1とビグアナイド薬との併用療法を採用して退院した.退院後はHbA1c 6%前半を保持している.小児期から思春期という血糖コントロールの困難な時期をIGF-1治療に適宜経口血糖降下薬を併用した現在30歳のインスリン受容体異常症A型の長期治療経験を報告する.
コメディカルコーナー・原著
  • 黒瀬 聖司, 今井 優, 別府 浩毅, 内藤 玲, 宮本 雅子, 桝田 出
    2010 年 53 巻 8 号 p. 631-635
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    心拍数減衰応答(HRR)を用いた糖尿病患者の運動強度設定法について検討した.対象は糖尿病教育入院患者45名である.HRRはトレッドミル運動負荷試験終了時から直後1分目の心拍数減衰値と定義し,HRR>18拍/分を正常群,≦18拍/分を低下群に分類した.また心肺運動負荷試験から嫌気性代謝閾値(AT)を測定し,Karvonen法によりATに相当するestimated-kを求めた.その結果,HRRの低下は48.9%に認めた.estimated-kは正常群0.37±0.12,低下群0.27±0.14であり有意な差を認めた(p<0.05).HRRはestimated-kとの間に正の相関関係(r=0.39,p<0.01)を認めた.またestimated-kに影響する因子の多変量解析の結果,HRRが抽出された.以上から,HRRが低い症例ではk値すなわち目標心拍数を低めに設定することが必要と考えられ,HRR低下群ではk=0.27が適当と考えられた.
  • 長谷川 美代, 佐々木 英夫, 小林 昌子, 石月 公美子, 石川 裕子, 佐藤 卓, 松林 泰弘, 五十嵐 智雄, 原 正雄, 村山 伸子
    2010 年 53 巻 8 号 p. 636-643
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/08
    ジャーナル フリー
    SMBGを用いた栄養教育が,血糖コントロールに与える影響を検討した.通院中の30歳から69歳の男女,HbA1c 6.5%から8.9%,BMI 25 kg/m2以上でインスリン非投与の肥満2型糖尿病患者49名を無作為に割り付け,解析者は介入群19名,対照群21名であった.介入群には6カ月間週2回夕食2時間後のSMBGと2カ月に1回食事と食後血糖との関連について栄養教育を行った.結果,HbA1c(mean±SD)は介入群で7.3±0.5%から7.1±0.7%と変化したのに対し,対照群は7.3±0.7%から8.1±1.1%と増加し(p<0.001),介入前後の変化量に群間差が認められた(p<0.001).介入群では,BMIが28.4±3.0 kg/m2から28.0±3.1 kg/m2と減少(p=0.036)し,食知識,自己効力感,食行動が改善し,糖尿病治療満足度が高まった(p=0.012).
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