抄録
症例は61歳の男性.2009年1月1日から感冒症状が出現した.6日から38~39℃の発熱が持続し,15日に精査加療目的で入院した.入院時,肝・胆道系酵素の上昇・高血糖を認めた.超音波検査及び全身のCTでは発熱の原因は不明であった.喀痰・尿・血液の培養,喀痰の抗酸菌塗抹も陰性であった.抗菌薬投与にて加療を行うも,Disseminated intravascular coagulation(DIC)・Acute respiratory distress syndrome(ARDS)・急性腎不全に至った.また汎血球減少・高フェリチン血症が出現したため,21日に骨髄穿刺を施行し,骨髄所見でマクロファージの血球貪食像を認め,血球貪食症候群と診断した.ステロイド投与を行い,炎症所見・熱型は改善傾向であったが,肝・胆道系酵素の上昇は持続したため,27日に肝生検を施行し肉芽腫病変及び抗酸菌を認めた.この結果から粟粒結核と診断し,抗結核薬の投与を開始した.その後は,肝機能障害・腎機能障害・DIC・呼吸状態は著明に改善を認めた.今回我々は,2型糖尿病に血球貪食症候群・DIC・ARDS・急性腎不全を合併した粟粒結核の1救命例を経験したので報告する.