抄録
症例は44歳の肥満男性.2008年7月より高血糖症状を自覚し7月25日初診,糖尿病ケトーシスの診断で入院となった.清涼飲料水の多飲は認めず,抗GAD抗体は陰性であった.インスリン療法を離脱後,ピオグリタゾンの内服で退院となった.HbA1c(以下HbA1cは国際標準値で表記(糖尿病53:450-467, 2010))5.6 %まで改善したが,体重増加を契機に2009年7月血糖コントロールが悪化,8月に入り高血糖症状を認め入院となった.HbA1c 8.5 %,尿ケトン体陽性であった.インスリン分泌能は前年より低下し,膵島関連自己抗体の陽性化を認めた.インスリンを継続し血糖コントロールは改善したが,食事療法,運動療法が遵守できず体重が増加し再び悪化した.内因性インスリン分泌能は退院後不十分ながら回復を認め,膵島関連自己抗体は2011年4月の時点で陰性となった.本例は,経過からketosis-prone type 2 diabetesと考えられた.本邦での報告は少なく,文献的考察を含め報告する.