糖尿病
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症例報告
尿糖排泄閾値低下によるHbA1c値の低下が示唆された境界型糖尿病の2症例
大野 洋介信原 敬子日向 崇小寺 力高橋 行広伊藤 利光安田 浩子
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2013 年 56 巻 11 号 p. 868-873

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抄録

糖尿病外来受診患者でHbA1c(NGSP値)は基準範囲(5.4~5.5 %)だが,尿糖陽性や空腹時高血糖を認める2症例(症例1,2)について,その病態を検討する目的で75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施した.2症例共に,血糖曲線は境界型糖尿病,インスリン分泌能は初期分泌が低下(インスリン分泌指数は0.18~0.25),追加分泌は120分に分泌のピークがあり,相対的なインスリン分泌不足を認めた.尿糖は負荷後60分,120分の排泄濃度が著しく増加し,血糖値と比較して,尿糖排泄閾値低下状態が示唆された.我々はこの2症例の位置付けを検討するため,同じHbA1cを示す正常例(症例3)の尿糖濃度及び境界型糖尿病患者(症例4)における尿糖排泄量を75 gOGTTで検討した.その結果2症例(症例1,2)は,従来の腎性糖尿の定義とは異なる,新たな尿糖排泄閾値低下所見である可能性が推定された.尿糖が多量排泄された結果として,ヘモグロビンを糖化する血中グルコース濃度が減少し,HbA1c値が低下した可能性がある.貴重な診断基準であるHbA1cを得た現在において,尿糖値が糖尿病の診断に及ぼす影響の重要性を示唆する症例であり報告する.

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© 2013 一般社団法人 日本糖尿病学会
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