糖尿病
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症例報告
3271番位tRNALeu (UUR)変異を有するミトコンドリア糖尿病の15年を超えた追跡経過観察
鈴木 吉彦島田 朗佐野 元昭太田 成男
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2013 年 56 巻 3 号 p. 173-178

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抄録
54歳男性.既に3271番位変異ミトコンドリア糖尿病として報告され経過観察していた.GAD抗体陽性時,血糖コントロールは悪化したが,一時的で,その後,陰性化し血糖コントロールも改善した.文献上7名のGAD抗体陽性化したミトコンドリア糖尿病症例が報告されているが,GAD抗体が陰性化し,インスリン非依存状態が持続した症例の報告はない.また母系遺伝の家族歴が濃厚でも,難聴を伴う親族がいなかった点は3243変異をもつミトコンドリア糖尿病と異なっていた.
その後,インスリン分泌能は経年的に低下し血糖コントロールは悪化した.そのため,シタグリプチン50 mgから開始し100 mgに増量投与したところ,約9ヶ月で血糖コントロールは改善しOGTTでインスリン分泌は亢進し食後高血糖は抑制されていた.本例は3271変異ミトコンドリア糖尿病へのDPP-4阻害薬の有効性を証明した世界で最初の症例であり,貴重な知見と考え報告する.
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© 2013 一般社団法人 日本糖尿病学会
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