抄録
症例は63歳男性,2012年4月低血糖による意識障害にて他院に救急搬送され,改善後精査のため当院に紹介受診された.空腹時血糖は43 mg/dlと低値を示したが,75 g OGTTではimpaired glucose toleranceを呈した.腹部CTにて膵尾部に腫瘤を認め,インスリノーマを疑ったが,Fajans指数などインスリン自律分泌指標を満たさなかった.一方プロインスリン値は70.7 pmol/lと高値であった.選択的動脈内カルシウム注入試験にて脾動脈からの注入により,IRIの有意な上昇を認め,膵尾部のインスリノーマと診断,膵尾部切除術が施行された.術後空腹時血糖は上昇,IRI値著変なくプロインスリン値は6.7 pmol/lと著明に低下し低血糖症状は消失した.本症例では,IRIの上昇は軽微であったが,高プロインスリン血症が低血糖発症に関与したと考えられた.