症例は52歳女性.200X年4月より早朝に強い空腹感,いらいら感を自覚し食事摂取により改善していた.同年8月起床時に意識障害が出現,その際の血糖41 mg/d
lで入院.身長154.1 cm, BMI 16.7 kg/m
2, FPG 76 mg/d
l, F-IRI 2.7
μU/m
l, 75 g-OGTTでは血糖正常,血糖応答性のあるインスリン分泌を認めたが,プロインスリン(PI)は109 pmol/
l(1.3~6.0 pmol/
l)と著明高値を示した.絶食16時間後に低血糖が誘発され,CT上膵尾部に径10 mmの造影される腫瘤を認め,選択的動脈内Ca注入法でも同局在が確認され,インスリノーマと診断.膵頭部温存膵尾部切除術を施行した.本例では病理学的に悪性所見はなく術後4年間再発もない.本邦でPI分泌優位の症例報告は過去3例と少なく,中でも本例はPI/IRIが極めて高値であり,希少な症例と考えられる.
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