2017 年 60 巻 4 号 p. 301-308
症例は60歳,男性.過去に糖尿病の指摘はなかった.2012年11月上旬頃から口渇を自覚し,夜間頻尿や多飲を主訴に当科外来を受診された.HbA1c 12.5 %,随時血糖396 mg/dL,CPR 3.00 ng/mL,GAD抗体<0.3 U/mLであり2型糖尿病と診断し,薬物治療後は空腹時血糖127 mg/dL,CPR 2.55 ng/mLとインスリン分泌能は改善した.細小血管合併症は認めなかったが,ABIで右0.54,左0.58であり下肢造影CTを施行したところ,腎動脈遠位から両側腸骨動脈は慢性完全閉塞しておりLeriche症候群と診断した.さらなる精査で右腎動脈の高度狭窄病変や冠動脈の有意な狭窄病変を認めた.Y型人工血管置換術を施行した結果,ABI右1.05,左1.07と改善が見られた.糖尿病患者では無症候であっても細小血管合併症だけではなく,大血管のスクリーニングも重要である.