2018 年 61 巻 1 号 p. 15-21
症例は29歳,女性,主訴は意識障害.空腹時の意識障害を主訴に来院し,インスリノーマの診断で膵体尾部切除術を受けた.術前後で血清chromogranin A濃度を測定・比較したところ,術直後と術後7.5ヶ月後には術前と比較して高値を認めた.インスリノーマの転移や再発を疑い精査するも,それらを示唆する所見を認めなかった.これまでの報告によると,神経内分泌腫瘍において血清chromogranin A濃度は診断・治療経過のバイオマーカーとなりうるが,インスリノーマはその限りではない.本症例においても同様の結果であり,インスリノーマでは低血糖症状の確認や画像のフォローアップが腫瘍の転移や再発の発見に重要であると考えた.