2019 年 62 巻 1 号 p. 24-30
26歳男性.BMI 34.6 kg/m2,糖尿病歴なし.入院前日夜間より口渇,多飲,多尿が出現し,当日朝より倦怠感を自覚,昼頃には不穏・嘔吐を認めた.救急隊到着後に心停止となり,ドクターヘリで当院に搬送された.血糖1060 mg/dL,HbA1c 6.2 %,血中3-ヒドロキシ酪酸9685 μmol/L,K 7.5 mEq/L,動脈血のpH 6.835,HCO3- 6.0 mmol/Lと,糖尿病ケトアシドーシス,高カリウム血症を認めた.抗GAD抗体・抗IA-2抗体・抗インスリン抗体は陰性,尿中CPR 8.5 μg/day,グルカゴン負荷試験の前後とも血中CPR 0.20 ng/mLであり,劇症1型糖尿病と診断した.本報告により,心停止の鑑別診断の一つとして劇症1型糖尿病の想起につなげ,病院前診療の重要性を再認識されたい.