糖尿病
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症例報告
妊娠後期に劇症1型糖尿病を発症したが正常分娩に至った1例
小宮 朋子山岡 紅生井 一之伴 政明
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キーワード: 劇症1型糖尿病, 妊娠
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2019 年 62 巻 3 号 p. 155-161

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抄録

症例は33歳の妊娠女性,定期健診での尿検査で尿糖を認めず,母児ともに問題なく経過していた.30週4日に下腹部痛と胎動減少を認め,当院を来院した.胎児心拍数モニタリング上,高度遅発一過性徐脈を認め,緊急入院となった.血糖601 mg/dL,HbA1c 5.5 %,尿ケトン4+,尿中CPR <1.1 μg/日,pH 7.238,BE-16.7 mmol/Lであった.発症3日前より感冒症状.来院2日前より口渇,多飲,多尿を認め,劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスと診断した.生理食塩水による大量補液とインスリン持続静注を行い,アシドーシスは改善し,胎動も良好となった.インスリン療法を継続し,38週2日に正常分娩に至った.妊娠中に劇症1型糖尿病を発症すると,胎児予後は極めて不良であるといわれている.本症例はインスリン加療を行い,正常分娩に至った極めて貴重な症例である.

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© 2019 一般社団法人 日本糖尿病学会
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