2019 年 62 巻 9 号 p. 508-513
症例は67歳男性.50歳時に2型糖尿病と診断され加療を開始しDPP-4阻害薬とインスリン療法でHbA1c 7 %台を推移していた.67歳時に腰部脊柱管狭窄症に対して硬膜管除圧術を施行した2日後に,両肩・肘・手関節,手指,右膝関節の疼痛と,両手背・足背の圧痕性浮腫が出現した.筋痛なし.CRP 16.4 mg/dL,抗核抗体やRF定性は陰性で,単純X線では骨破壊像を認めなかった.以上よりRS3PE症候群を疑い,プレドニゾロン 15 mgの内服を開始した.開始数日で浮腫は著明に改善し,関節痛や炎症反応は軽快した.プレドニゾロンを漸減し,DPP-4阻害薬を中止した.RS3PE症候群の発症には血中VEGF濃度上昇が関与していると推測されている.VEGFの基礎値を上昇させうるインスリンやDPP-4阻害薬内服下では,手術侵襲によりRS3PE症候群を引き起こす可能性がある.