2020 年 63 巻 1 号 p. 9-17
当院では糖尿病患者の入院時に看護師が足の観察を行い,病変の早期発見と予防のための療養支援を行っている.今回,糖尿病神経障害の診断に有用とされる簡易神経伝導測定機器DPNチェックから得られた結果と,看護師の行う足病変のリスク評価の関係を検討した.2型糖尿病患者111例(平均年齢:64±14歳,糖尿病罹病年数:10±9年)を対象とし,足の観察16項目のうち2項目以上に異常のみられた場合を異常群とした.異常群は54例(49 %)と高頻度で,異常群では活動電位振幅(SNAP)が7.1±4.2 μVと正常群(9.5±5.1 μV)より有意に低値であった.また,観察異常項目の総数とSNAPは有意な負の相関を示し,なかでも皮膚や血流の観察異常を呈した例でSNAPは有意に低下していた.以上よりDPNチェックはフットケアの教育指導・療養支援を重点的に行うべき患者を抽出するために有用と考えられる.