2023 年 66 巻 5 号 p. 348-352
Prader-Willi症候群(PWS)は視床下部に先天異常があり過食から高度肥満をきたし高率に2型糖尿病を発症する.本症例は高度肥満(BMI 43.8 kg/m2)による拡張不全型心不全で入院を繰り返す血糖コントロール不良のPWSであった.今回セマグルチド0.25 mgの週1回皮下注射を開始したところ,早期から著明な体重減少とHbA1c低下を示した.投与前,投与後4か月では体重が108 kgから89 kgへ19 kg減少,HbA1cは8.2 %から5.7 %に2.5 %低下した.心不全の再発も認められなくなった.Glucagon-like peptide(GLP)-1receptor agonist(RA)は体重減少作用を有することからPWSに使用した報告は存在するが,少量のセマグルチドで著効を示した報告はなく,GLP-1RAによる心不全改善効果に関しても示唆を与える.