糖尿病
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67 巻, 2 号
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レビュー
  • 金﨑 啓造, 植木 浩二郎, 南学 正臣
    2024 年 67 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/01
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    慢性腎臓病[Chronic Kidney Disease(CKD)]は糖尿病の併存疾患の中で主要かつ最も重要なものの一つである.しかしながら,その疾病を表す名称に関しては世界的にも,Diabetic Nephropathy,Diabetic Kidney Disease,CKD with Diabetes,あるいはDiabetes and CKDなど呼称に関してさまざまな混乱があり,同様の混乱は本邦でも見受けられる.そこで今回,日本糖尿病学会,日本腎臓学会は米国を中心として世界で多く使われている「Diabetic Kidney Disease」に対応する日本語訳を「糖尿病関連腎臓病」とし,その概念を定義した.本稿では糖尿病症例における腎臓合併症の歴史的背景を振り返りながら,疾病概念の定義と定義が必要となった背景を概説する.

原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 岩﨑 孝俊, 小林 琢, 倉田 裕子, 二階堂 暁, 幡 芳樹, 廣瀬 昇
    2024 年 67 巻 2 号 p. 50-56
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり

    高齢男性2型糖尿病患者166例を対象として,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)がPeak VO2による運動強度が5 METs有無の評価に応用できるかを調査した.患者背景,併存疾患の有無,運動耐容能,運動機能(CS-30,握力)のそれぞれについて調査し,Peak VO2が5 METsを基準として2群間比較を実施した.Peak VO2が5 METs有無を従属変数とし,両群間の比較で有意差が認められた項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を行いCS-30が抽出された.CS-30のReceiver operating characteristic解析(ROC)解析結果,ROC曲線の曲線下面積は0.791を示し,カットオフ値は20回であった.高齢男性2型糖尿病患者におけるCS-30はPeak VO2が5 METs有無の予測モデルに有益な診断ツールであることが示唆された.

症例報告
  • 山口 真依, 室井 紀恵子, 長谷川 千恵, 伊勢村 昌也, 水野 達央
    2024 年 67 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり

    29歳女性.第1子は出生後高血糖を認め,1ヶ月時に遺伝学的検査で母子共にABCC8遺伝子バリアントが判明した.第2子妊娠17週に施行した75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で3点陽性であり妊娠糖尿病と診断.妊娠21週にインスリン治療を開始.産後インスリン中止したが,産後2ヶ月75 g OGTTで血糖値159 mg/dL(0分),315 mg/dL(60分),338 mg/dL(120分),HbA1c 6.6 %と糖尿病の診断に至りインスリン治療を再開.インスリン治療で血糖コントロール困難であり,ABCC8遺伝子バリアントに起因する糖尿病を考え,グリベンクラミド1.25 mg/日を開始し速やかに血糖コントロールは良好となった.ABCC8遺伝子病的バリアントによる糖尿病は発症年齢や発症様式が多岐に渡るが,スルホニル尿素薬(SU薬)が有効との報告があり,正確な診断が重要である.

  • 佐藤 宏樹, 佐藤 義憲
    2024 年 67 巻 2 号 p. 64-68
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/01
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    2型糖尿病治療中である65歳の男性が,乳酸アシドーシスのため入院した.当初,インスリン分泌が著明に低下していたが,数日後から徐々に回復した.同様にインスリン分泌が著明な低下におちいり,その後に回復した2型糖尿病が2例報告されている.著明な高血糖をともなった2型糖尿病例とKetosis-prone type 2 diabetes例である.本症例とこれら症例は,発症経過に共通点が少なく,同様の機序で極度のインスリン分泌低下にいたったとは考えにくい.膵ベータ細胞は種々の代謝性,炎症性ストレスにより機能が低下し,極端な場合はインスリン分泌完全停止にまで近づくが,そこからでも回復可能であることが示唆される.

地方会記録
委員会報告
  • 中村 二郎, 吉岡 成人, 片桐 秀樹, 植木 浩二郎, 山内 敏正, 稲垣 暢也, 谷澤 幸生, 荒木 栄一, 中山 健夫, 神谷 英紀
    2024 年 67 巻 2 号 p. 106-128
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/01
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    アンケート調査方式で,全国208施設から糖尿病症例68,555名,非糖尿病症例164,621名(計233,176名)が登録され,2011~2020年の10年間における死因を解析した.1)糖尿病症例における死因の第1位は悪性新生物38.9 %(肺癌7.8 %,膵癌6.5 %,肝臓癌4.1 %),第2位は感染症17.0 %,第3位は血管障害10.9 %(脳血管障害5.2 %,虚血性心疾患3.5 %,慢性腎不全2.3 %)で,悪性新生物の増加および血管障害の減少傾向が継続していた.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,虚血性心疾患以外の心疾患が9.0 %と高率で,ほとんどが心不全であった.糖尿病性昏睡は,0.3 %と低率であった.2)非糖尿病症例と比較して糖尿病症例では,悪性新生物,感染症,慢性腎不全,虚血性心疾患および心不全の比率が有意に高く,脳血管障害の比率は有意に低かった.3)糖尿病症例において,悪性新生物は各年代で死因の1位であり,50歳代および60歳代では約半数を占めた.感染症は,70歳代以降で最も比率が高かった.血管障害は40歳代および50歳代では感染症の比率を上回っていた.虚血性心疾患は,40歳代で他の年代に比して高率で,慢性腎不全は70歳代以降で最も高率であった.虚血性心疾患以外の心疾患としての心不全は,70歳代以降で最も高率であった.4)糖尿病症例において,膵癌は全ての年代において非糖尿病症例に比して著明に高率であった.糖尿病症例で感染症を死因とする比率は,全ての年代において非糖尿病症例よりも高く,50歳代以下では非糖尿病症例の2~3倍であった.糖尿病症例における慢性腎不全および虚血性心疾患は全ての年代で非糖尿病症例よりも高率であった.脳血管障害は全ての年代で糖尿病症例では非糖尿病症例よりも低率であった.虚血性心疾患以外の心疾患としての心不全は,全ての年代において糖尿病症例で非糖尿病症例よりも高率であった.5)糖尿病症例の平均死亡時年齢は,男性74.4歳,女性77.3歳で,日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ7.2歳,10.4歳短命であったが,前回調査と比べて男性で3.0歳,女性で2.2歳の延命が認められ,日本人一般の平均寿命の伸び(男性2.0歳,女性1.4歳)より大きく,日本人一般の平均寿命と糖尿病症例の平均死亡時年齢の差の縮小が継続していた.6)全死因での平均死亡時年齢は,血糖コントロール不良群(HbA1c≧8.4 %)で良好群(HbA1c<8.4 %)に比し1.6歳低かった.虚血性心疾患,脳血管障害,心不全,感染症および糖尿病性昏睡では,血糖コントロール不良群で平均死亡時年齢が低かった.7)全死因における平均死亡時年齢は,非糖尿病症例と比較して男女ともに糖尿病症例で有意に高かった.死因別の平均死亡時年齢は,非糖尿病症例と比較して糖尿病症例では悪性新生物および脳血管障害で有意に高く,感染症,慢性腎不全および虚血性心疾患で有意に低かった.

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